巷では数万円台で購入できるミニPCがしばしば話題になっていますが、なぜミニPCは安いのか。その背景にある事情を2015年頃からミニPCのレビューを続けている私が解説します。

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ミニPCが安すぎる理由

多くのミニPCに共通する点

多くのミニPCに共通して言える点を紹介します。

本体が小さいので組み立てコストが安い

ミニPCは本体が小さく、軽量です。組み立てる際の労力も一般的な「大きな」デスクトップPCと比較して省力で済みます。

PCの組み立て工場では、PCを横にしたり縦にしたりと向きを変えながらPCを組み立て、最終的に段ボール箱に梱包します。ミニPCは1Kg前後と軽量ですが、デスクトップPCは5Kg前後の重量が一般的です。その分、組み立て作業は大変です。また、PCの組み立て工場では女性のスタッフも少なくないです。軽量・コンパクトの方が必然的に組み立てやすくなり、組み立てコストも軽減できます。

本体が小さく輸送コストが安い

ミニPCは本体が小さく、軽いので輸送コストが安いです。

例えばヤマト運輸の「パソコン宅急便」で東京-大阪間で輸送する場合、ミニPCが入る「100サイズ」の運賃は2296円ですが、デスクトップPC用の160サイズでは3678円と1000円以上の差になります(個人向けの価格)

一部PCメーカーは中国に工場がある場合もあり、輸送距離が長いほどミニPCの軽量・コンパクトがより送料の部分に大きく影響することになります。

加えて梱包資材にも大きな差があります。ミニPCは一般的なサイズの段ボール箱に、簡易的な緩衝材だけ詰めて輸送することが出来ます。一方、大きなデスクトップPCは大きな段ボール箱を用意し、更にその箱の中で輸送中にPCが動かないように固定する専用の緩衝材などを用意する必要があります。梱包資材だけ取ってみても、500円1000円の単位で差が生まれます。

一部のミニPCが「安い」理由

一般的な事情に加え、一部のミニPCが安い理由を解説します。

性能が低い

価格が安い分、性能が低い場合もあります。例えば2~3万円で購入できるミニPCを見てみると、タブレット用といえるCPUが搭載されている場合が多いです。PCとして見ると「10年前」のミドルスペックのPCと同程度のイメージです。メモリーも必要最小限なので家庭のメインPCとしてサクサク使えるか怪しい部分があります。テレビと接続して動画鑑賞用とか、小学生のお子さんの初めてのPCなどには良いと思います。

デスクトップPCではなかなか「タブレット級」のスペックの製品は見かけませんが、ミニPCではそのようなローレンジの製品ラインナップが充実しているため、ミニPCが「安く」見える原因の一つとなっています。

組み立てコストが安い中国で製造している

インフルエンサーがさかんに中国メーカー製ばかり紹介しているので「ミニPC=中国製」というイメージが定着してしまっています。実際には国内メーカー・国内組み立ての製品もあるわけですが、中国製造のミニPCは組み立てコストが安いです。

中国の賃金上昇や円安により以前と比較すれば差は縮まっているものの、ハイテク産業が集まる大都市、深センでも2025年時点でも最低月給は4.5万円程度、最低時給も500円未満と、日本と比べて労務コストが安いことがわかります。

PCの製造は手作業が多く、労働集約型の産業です。賃金の安さが中国製ミニPCの安さの一つの要因と言えます。

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サポートを簡略化している(弱い)

ミニPCに多い中国メーカーは国内PCメーカーと比較してサポート体制が貧弱です。名の知れた中国のミニPCメーカーでも電話サポートを提供していません。電話サポートを提供していないだけでなく、そもそもサポート自体を適切に提供できていないところもあります。Amazonなどで売られているノーブランドのミニPCにサポートを期待できるのかは疑問に感じるところです。

国内メーカーは24時間・365日の電話サポートを提供しているところもあり、サポート体制が充実しています。中国メーカー(特にノーブランド)が安い理由の一つはサポートの差と言えます。

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違法なライセンスを使用しているケース

Amazonなどで売られているノーブランドのミニPCでは、違法なライセンスのWindowsをインストールし、販売している例がありたびたび話題になっています。

ボリュームライセンスといって、特定の会社内などで使えるライセンスのWindowsを販売用に使ってしまう例が多々報告されています。途中で使用不能となる場合もあるため、ユーザーも影響を受けます。

ある程度名の知れたメーカーのミニPCであれば、中国メーカー製でもこのようなリスクは皆無といえますが、Amazonなどで「よくわからない」メーカーのミニPCは違法なライセンスでコストカットしている事例があります。突然使用不能になる場合もあるので、安物買いの銭失いとなります。信頼できる国内メーカーのミニPCを選ぶことをおすすめします。

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信頼できる国内メーカーを中心に、各社製品を見やすい一覧の比較表で比較できます。実機レビューも掲載しているのであわせて参考にしてください。

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